【動画連動】MIYAVI流スラム奏法を初心者向けの曲で徹底解説!
ギターを叩いたりしてパーカッシヴなサウンドを奏でるスラム奏法。特殊奏法ゆえにやり方に関する情報が少ないなど謎多きテクニックでもありますが、上達への近道は、良い音を出すためのコツ…すなわち「原理」を知ることです!
本記事ではスラム奏法に初めて挑戦するには最適な楽曲としてMIYAVIさんの ”Guard You” を取り上げながら、
「叩くタイミングの掴み方」
「良い音が鳴る叩き方」
を中心に楽譜やフォームを捉えた画像付きで解説します!
楽譜は以下よりダウンロードできます。
さらに、動画では手元の動きをアップで見ることができるので是非一緒に活用ください。
目次
その前に!あなたのエレアコはスラム奏法に対応してますか!?
ライブなどでエレアコを使ってスラム奏法をする場合はひとつ注意が必要です。
音を拾うピックアップの種類や構造によっては、ボディを叩いた音が拾われない場合があります。
たとえば、サドルの下に敷かれているピエゾピックアップは多くのエレアコに搭載される方式ですが、残念ながらボディを叩いた音が十分に出力されません。
スタジオなどでエレアコをスピーカーから鳴らしてみて、ボディを叩いた音がスピーカーからもしっかり聴こえるか確認してみることをおすすめします。
もし弦の音は聴こえてもボディを叩く音は小さい(あるいはほとんど聴こえない)場合はボディの内側に貼り付けるコンタクトマイクなどを増設するか、ピックアップを搭載していないアコギと同じようにマイクをエレアコの前に立てたりしてボディの打音を拾えるようにする必要があります。
コンタクトマイクを増設する場合も既存のピックアップと併用するための電気回路を組む必要があるなど、簡単にできる作業ではありません。
最初からコンタクトマイクなど、ボディの打音が拾えるピックアップが搭載されたエレアコもありますので楽器屋さんに相談してみるのも良いでしょう。
MIYAVI流スラム奏法:叩くタイミングの掴み方 ~基本フレーズ編~
この章ではMIYAVIさんの楽曲 ”Guard You” のAメロやサビなど多くの部分で使われる、基本とも言えるフレーズを題材にギターを叩くタイミングの掴み方を解説していきます。
まずは演奏と楽譜をご覧ください。
注意:楽譜は2/2拍子での表記です!拍の取り方に注意してください。
スラム奏法 叩くタイミングの掴み方①:リズムをとる
このフレーズでは8分音符がほとんどを占めています。
まずは左手で弦をミュートし、右手親指で軽く弦を「ボンボン」と8分で叩いてリズムをつくっていきましょう。
このリズムを基本に、下で解説するいくつかの要素を加えていきます。
スラム奏法 叩くタイミングの掴み方②:コードを叩く
①で作ったリズムの中にコードをサムピングで叩く動作を混ぜていきます。
タイミングは毎小節の1拍目を8分で2回叩くのを基本に、2小節目と4小節目はシンコペーション的に半拍前に食って叩きます。
ここで楽曲で使われるもう一つのテクニック『サムピング』のやり方にも少し触れておきます。
❶弦がフレットに当たって「カチッ」と音が鳴るまで叩きつける。これがスラップ独特の音色の素!
❷ただし叩いた瞬間に指を離す。押し付けると弦振動を止めてしまう。
❸親指の硬い部分=第一関節で叩くと鋭い音や反動を得やすい。
この3つがサムピングの大まかなコツです。
サムピングのやり方は本記事の連動動画でも少し解説していますが、サムピングのやり方に特化した解説動画もあるので是非チャレンジしてみてください。
スラム奏法 叩くタイミングの掴み方③:ボディを叩く
ここでいよいよスラム奏法のテクニックであるボディヒットが出てきます。
叩くタイミングは毎小節の2拍目です。
サムピング=強、リズム=弱、ボディヒット=叩、とそれぞれ文字で表してみると…
となります。
MIYAVI流スラム奏法:抜けの良い音の出る叩き方
叩くタイミングはわかってなんとなく弾ける(叩ける)ようになってきましたか?
この章ではさらに良い音でフレーズを奏でることができるようになるヒントとなるコツを紹介します。
スラム奏法 良い音の出し方①:中指の第一関節で叩いて立ち上がりの早い音を出す
上述のサムピングの仕方でも少し触れましたが、アタック感や音量のある音を出すには硬い部分で叩くことがポイントです。
シンバルを叩く時をイメージしてみてください。
木でできたスティックで叩くのと、先が柔らかいマレットで叩くのではどちらがより立ち上がりの早い音が出るでしょうか?
もちろん、木のスティックの方が音の立ち上がりは早いです。音色もより明るくなります。
これと同じように、指の中でも硬い部分=関節を当てることで立ち上がりの早い音を出すことができます。
反対に、柔らかい指先で叩いてもそれほど大きく芯のある音は出にくいでしょう。
特に中指は手にある5本の指の中で最も長いので、手を振りかざした時に伝わる遠心力も他の指に比べて大きいです。
その強い遠心力をもらうことで、少ない力で大きな音を出すことができます。
しかし、逆に「ココが当たると良い音が出にくい」叩き方もあります。
例えば、第二関節まで当たってしまったり、平手打ちのように手全体が当たるような状態は「パンッ」「ペチッ」といった耳障りな音になってしまいがちです。
なぜこのような音が出てしまうのか?それは当たる面積が多すぎるからです。
大きな空洞を持ったアコギのボディをよく鳴らすという意味では、表板を鳴らすだけでなく、ボディ全体・空洞まで鳴らすイメージで叩くことがポイントです。
スラム奏法 良い音の出し方②:手の根元付近を軸にする
①では「なぜ中指の第一関節で叩くと良い音が出やすいのか」についてイメージたっぷりに解説しました。
これだけで中指の第一関節を毎回正確にヒットできればこの節を読む必要はないかもしれませんが、やっぱり第二関節まで当たってしまったり、反対に指先しか当たらなかったりと…なかなか難しいのです。
正確に中指の第一関節を当てやすくするコツは、
❶手の根元付近は弦に触れてもOK。叩く際に「手の他の部分が当たらないように…」とするとヒットポイントへの狙いが定まりにくくなります。ブリッジミュートをする際の手の部分を弦に当たるようにすることで、そこが軸となって指の角度や位置が定まりやすくなります。ただしあくまで音には直接関係はなく、位置決めの目安としてのポイントなので過剰に意識する必要はないかもしれません。
❷指の根元を軽く曲げて余計な弦に当たらないようにする。中指の第一関節+手の根元付近と当たる箇所が2箇所となりますが、その間の部分は当たらないようにしましょう。上述の平手打ちのようになってしまいます。
MIYAVI流スラム奏法:タッピングハーモニクス × スラップ 〜Bセクション〜
この章ではMIYAVIさんの楽曲 ”Guard You” のBセクションのフレーズについて解説していきます。
基本的には通常のダウンストロークでコードを鳴らしていきますが、トリッキーな要素としてコードのタッピングハーモニクスをスラップの要領でやる部分があります。
やり方としては上述のサムピングのコツと同じで、叩く位置がフレットの真上に変わります。
しかしコードを抑えた状態では弦によってハーモニクスを鳴らすフレットポジションが変わるので、親指一本でそのすべてを鳴らすのはとても難しいことです。
”Guard You”では特に2弦におけるオクターブ上のハーモニクス音をはっきりと出したいので、押弦している6フレットの12フレット分先…つまり18フレットを打点にしてサムピングします。
叩いた弦の全てがハーモニクス音になっていなくても問題ないと思いますが、せっかく押弦しているところが全く鳴らないのはコードを鳴らすという点では避けたいところです。
MIYAVI流スラム奏法:リズミカルなプレイのコツ & 弦を抑える手でのボディヒット 〜イントロ〜
最後の章でイントロのフレーズがでてくるというややこしい展開になっていますが…イントロのフレーズは上で紹介した基本フレーズより少し複雑になっているので、リズム感を崩さずプレイすることが大切です。
3連符が出てきたり弦を抑える方の手でボディヒットしたりと忙しくなってくるので、その部分を細かく噛み砕きながら解説していきます。
リズミカルなプレイのコツ①:音を出すタイミング・止めるタイミングもタイトに
当たり前のことを言っているように聞こえますが、スラップやスラム奏法ともなるといろいろな動作で忙しくなってしまうので特に音を止めるタイミングが疎かになってしまいやすいと思います。
最初はコードを8分で2回サムピングしていますが、その直後は休符です。この休符では音をピタッと止めるとよりタイトなリズム感を出すことができます。
休符ですが、音を止める際に弦に手が当たった音が鳴っても良いと思います。ゴーストノート的な成分も加えられるのでよりリズミカルになります。
リズミカルなプレイのコツ②:3連符でのボディヒット
次の音符は3連符でボディを叩くようになっています。ここでは人差し指→中指→薬指の順番でそれぞれタイミングをずらしてボディに指を打ち付けていきます。
どの指でも上述の「第一関節を当てる」「手の根元を軸にする」というコツは変わりません。指の長さがそれぞれ違うので音量にバラツキが出ないよう気をつけましょう。
この次には弦を押さえている手でボディヒットします。弦に触れる手が片方なくなってしまうので、余計な音が鳴らないように弦はしっかりミュートしておきましょう。
弦を抑える手でのボディヒットのコツ①:中指+薬指の第一関節で叩いて立ち上がりの早い音を出す
指の第一関節で叩く点は弦を弾く手と変わりません。
ですが、この場合は中指だけでなく薬指の第一関節も一緒に当てることが良い音を出すための条件になっているように感じています。
弦を弾く方の手では必ずしもそうである必要がないところがなぜなのか筆者もよくわかっていないのが正直なところなのですが、おそらく叩く位置が左手で叩く場合に比べてボディの縁に近いために振動しにくく、より強い力を与える必要があるからではないかと推測します。
弦を抑える手でのボディヒットのコツ②:最小限の面積で叩く
①にも通じるコツですが、指とボディの位置関係から第二関節や人差し指も一緒に当たってしまうことが多いかと思います。このような部位が当たると叩く面積が広い平手打ち状態で薄い音になってしまいがちなので弦を弾く手でボディヒットをする時以上に当たらないように意識する必要があります。
弦を抑える手でのボディヒットのコツ③:ボディの縁よりやや内側を叩く
これも①で少し触れていますが、ボディの表板は打楽器のヘッド(膜)とも捉えることができます。カホンのようなイメージが最も近いと思います。
打楽器の多くは叩く場所が打面の中心に向かっていくほど低音が増していき、反対に縁に向かうほど高音が目立つようになります。
この低音と高音のバランスをとることが大切であり、あまり縁の近くを叩くと箱鳴り感のない「ペチッ」と薄い音になってしまうので避けた方が良いでしょう。
後のフレーズは基本フレーズを少しいじったようなものなので、応用が効くと思います。
まとめ:良いボディヒットの音を出すための鉄則は「指の第一関節を当てること」!
ここまで実際のフレーズを交えながらMIYAVIさんのようなスラム奏法をする上でのコツを解説しました。
(右利きの場合)弦を弾く右手でも弦を抑える左手でも、ボディを叩く時に当てる部分はほとんど一緒です。
そして余計な音を鳴らさないように弦のミュートを忘れないこともとても大切です。ミュートができていないと、せっかく抜けの良いヒット音が作れても弦の音に汚されてしまいます。
今回紹介したMIYAVIさんの ”Guard You” はスラップ奏法やスラム奏法が含まれていながらも他の曲に比べてテンポがスロー・フレーズのパターンが単純で分かりやすい・スラップの基本であるプルの動作がないといった点から、初めてスラム奏法などの特殊奏法にチャレンジするには入門曲とも言える楽曲だと思います。
ここで紹介・解説したものはさまざまなスラム奏法のスタイルのうち、ほんの一例にしかすぎません。
スラム奏法を用いて演奏するギタリストは誰もが自分独自のスタイルを持っており、それが特殊奏法という珍しい演奏スタイルの中でもさらに魅力や個性として輝いています。
そんな自由、だけど奥深いスラム奏法を始める入口の役割をこの記事が果たしてくれたのであれば嬉しいです。
SHIMAGAKU
2001年 東京都八王子市生まれ。
「MIYAVI奏法講座」として独学で学んだスラップギターの奏法やフレーズなどを解説する動画シリーズを制作。
ギターのみならずドラムやベース、最近では中学以来の吹奏楽器を再開しウィンドシンセに目覚めるなどのマルチプレイヤー。
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