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『キモチはオトに、変えられる』プロミュージシャン直伝の音楽教室
『キモチはオトに、変えられる』

プロミュージシャン直伝の音楽教室

「Mooer GE250」「FRACTAL AUDIO SYSTEMS Axe-FxⅡ」のディレイセッティングはこれで決まり!

さて、1章で解説した設定を目安にして、やっとディレイ選別と細かい設定の本題に入ります。
自分が一番気にしているのは、もちろんその時々の狙った効果を得られるかどうかです。

実はこれって、ある程度までは機能性が高いディレイであれば似た効果を得られてしまうんです。
それはどういうことか?今回その部分にフォーカスしていきます。

2章<ディレイ選びと設定>

マルチエフェクターには色々な種類のディレイが入っていますので、
今回は所有している「MooerGE250」と「FRACTAL AUDIO SYSTEMS Axe-FxⅡ」内のディレイを使用し、
選び方から、設定までをやってゆきます。
こちらもちろん各実機にも概ね当てはまる内容です。

<MooerGE250でのDelay選択と設定例>

MooerGE250のDelayセクションには
01DIGITAL
02ANALOG
03REAL
等々9種類もあります!

まず一体どれを選択すればよいのか。もちろん聞いてみてフィーリングで!ってのも良いと思いますが、
ディレイは大きく分けて2種類+その他のサウンド特徴に分けられます。

これを知っていれば目的に応じて選択もしやすくなると思います。

1、弾いた音をそのまま返すDIGITAL

2、ディレイ音のハイエンドやローエンドが削り取られたANALOG
(OPENREAL、TAPE、ECHO等もサウンド傾向はこの種類に属します)
柔らかい音が特徴です。

・その他の特殊ディレイ
弾いた音にディチューンなどエフェクトを掛けて返すMOD、反転して返すREVERSE、
ステレオでLRから交互に返すPINGPONG、弾いた音の強弱でディレイの出力も変わるDUCKINGやDYNAMIC、
何重にも別々のディレイを掛けられるDUALやQUAD等、他にも探せばまだまだいっぱいあると思います。

今回は基本形のDIGITALとANALOGについてお話しします。

例えば、ギターソロを弾いていて気持ち良い余韻や空間の大きさを狙うイメージとすると、
フィードバックやレベルはやや大きめになります。

そうすると、デジタルを選択していた場合、弾いた音が低音から高音まで、殆どそのまま返ってきますので、
レンジが広すぎてこのままでは今弾いてる音を邪魔してしまいます。

ここでは、良い意味で音が劣化しているアナログ系を使用すると、
無駄な高音ギラつきや、低音の気持ち悪い干渉を軽減してくれます。

反射音である山彦とは通常、空気中の湿気や障害物に当たりながら劣化というか変化して返ってくるので、
アナログの方が自然の節理に近いわけですね。

それがアナログが耳に良い塩梅で気持ちよく返ってきてくれる理由です。

自分の設定はANALOG、レベル30、フィードバック15、タイム364msecです。
(Sub Dとはサブディビジョンといって簡単に言うとTAP機能の事です。今回はタイムに黄金値を使っているのでOFF設定です)

続いて、リバーヴのような使い方としてディレイを使用する方法もあります。


このようにレベル2、フィードバック0~5程度にするとGE250では微かに反響のようなディレイが得られます。
このバンクはタイトなカッティングにも対応できるクリーンチャンネルと、ジャズマスターでコードをジャキジャキ刻む歪みの弱いクランチチャンネルですが、こういう使い方をすればほぼリバーヴのような効果として使えます。

自分はリバーヴについてはド派手な効果を狙ったもの以外は殆ど使わないのです。その理由として

■一つ目は、リバーヴはライブハウスやホールなど壁のある空間では天然に存在するからです。
ライブで演奏するときに、まったく同じセッティングをしているのにリハーサルと本番の音が違ったりしませんか?勿論緊張などで聞こえ方が変わるなど様々な要素もありますが、リハ時は固いイスや床で反響していた音が、本番で人がたくさん入る事で柔らかく多面積の物体へと変化し、残響が変化する現象です。
これもリバーヴの一種です。

■二つ目は、FOH(フロントオブハウス コンサート会場の客席側)はPAさんが判断しリバーヴを掛けてくれている場合も多いです。そして掛けるリバーブは全楽器同じ種類に統一した方が一体感があります。
つまりギター側でイケてるリバーヴを設定して行っても、他の楽器のリバーヴと何か馴染みが悪いなぁって事も稀に起こり得ます。

■三つ目は、リバーヴエフェクトは基本的に原音に奥行きを与えるので、音を遠くする効果があります。自分はそれがライブにおいてはあんまり好みじゃないのです。
ディレイだと山彦なので原音は遠くなりません。そしてアンプから出る音を背中から近接モニターする場合でもリバーヴのような残響が手に入るというわけです。

余談ですが、もうこれはホールチューニングレベルの話ですが、関東の冬は湿度が低くディレイやリバーヴの効きが良く、梅雨の時期は悪く聞こえます。

自分は特に大会場の際は、天気やエアコンなどの状況によって2~3%だけレベルをいじります。
あと野外ライブは反射物が圧倒的に少ないので、こちらは明確に設定を変更します。

あまり気づかれにくいこだわりです笑
でもこれは大切な事です!だって一番のオーディエンスは自分なのですから。自分が気持ち良いと思う方向にパラメーターを設定することで、プレイにより集中できれば、それがお客さんにも伝わるはずです。

こちらはフワフワとした浮遊感のあるコーラスチャンネルです。
アナログよりもっとボヤけた感じで、少し濁ったディレイが欲しかったのでGE250ではテープを選択しています。

<FRACTAL AUDIO SYSTEMS Axe-FxⅡの場合、詳細まで追い込む例>

フラクタルでももちろん同じような効果を狙っていますが、
こちらは多機能なのでより詳細なセッテイングが可能となります。

こちらはGE250と同じくギターソロ余韻用としてですが、アナログではなくデジタルディレイです。
先ほどと違うのはフラクタルはディレイにEQが付いているんです!
見て頂ければわかりますが、ハイエンド、ローエンド共にガッツリ削っています。

もちろん Axe-FxⅡにもアナログディレイはあるんですが、自分はデジタルの、殆どそのまんま返ってくる音をEQ加工して、自分でアナログっぽいディレイ風にカスタマイズしたほうがしっくりきました。
ディレイの機種特徴を自分好みにアレンジするわけです。

手前味噌ですが、自分の弾いてるライブ映像です。
中間のソロにディレイを掛けています。機材は同じAxe-FxⅡで、殆ど上の写真と同じ設定状態のものが掛かっています。
ソロは結構音数多いですが、ディレイは原音を邪魔せず、バンドに調和していると思います。(ミックスエンジニアさんのマジックも当然あります!)

また、こちらも先のGE250と同じ目的のカッティング用のクリーンチャンネルです。
今度はリバーヴに近い効果を狙うので、デジタルではなくアナログディレイとし、EQで更に自分好みにフィードバックの音質をカスタマイズしています。
更にディレイの前にディチューンを少し掛けて(Pitchブロック)ディレイ音だけを少し揺らしてます

フラクタルはとても複雑なセッテイングが出来るので、
ディレイのブロックと、通していないブロックとを分けてセンドリターンと同じ状態にすることが出来ます。

これを実機でやると大規模な機材と、面倒なセッティングになりますが、フラクタルなら可能なわけです。

<まとめ>

1章、2章にわたってお送りしてきた「いい感じのDelay」いかがでしたか。
「いい感じ」は人によって様々ですが、その設定には必ず理由があり、それを明確にすることで、
何んとなくから確信を持った「いい感じ」に追い込むことが出来ます。

例え、今回自分が書いた設定が見ている皆様にしっくり来なくても、
貴方だけの基準を明確に見つける事ができれば良いのです。

もちろんコンパクト・マルチエフェクトだけでなく、DTM上でディレイを掛ける際も、
PC上で同じような処理をギターだけでなく各楽器の特性や目的に応じて行っています。

この文を通して、貴方の目的に応じた「いい感じのDelay」を得られるヒントになれれば思います!
是非お手持ちの機材で試してみてください。

西山 昌一郎

ギタリスト、アレンジャー。 リットーミュージック「ギター・マガジン」誌コンテスト「2016 Guitar Magazine Championship vol.9」 グランプリ受賞。 2012準グランプリ受賞。

日本大学文理学部卒業。同大学Jazz研、慶応大学クロスオーバー研究会所属。在学中より、プロとして活動を始める。

アニメジャパンフェスティバルAJF NeoGeneration2013ハウスバンド、織田哲郎、マキタスポーツ(Fly or Die)、Kinki Kids、柊木りお、アキシブProject、GALETTe、ANNA☆S、渡辺宙明、堀江淳、五條真由美、チャン・リーメイ、マスダシマイ、asfi、sonymusic劇団ハーベスト、執事歌劇団Tact、ツートン青木、青木隆治、Voice、ユージソン、やないけいこ、金色のコルダ、アンジェリーク、三國無双、戦国無双シリーズ、楽器フェア2016JVC KENWOOD社デモンストレーター等々、レコーディング、アレンジ、コンサート、TV撮影等に参加。

ギター、ウクレレ講師としても、一般生徒の他に、ギタートレーナーとしてGAKU-MC(EASTEND+YURI)、MIKI(SoundHorizon)等を担当。

1983年、福井県生まれ、富山県育ち。奥山雄樹、松原正樹、鈴木健治に師事を受ける。

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