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『キモチはオトに、変えられる』プロミュージシャン直伝の音楽教室
『キモチはオトに、変えられる』

プロミュージシャン直伝の音楽教室

【アプリ連動 #2】「Spain」をエモく弾き倒す!アドリブ・ギター完全解説

皆さん、こんにちは!
オトノミチシルベ 春日市・大野城ギター教室 講師の目見田 光です。
第2回『PhraseStock』連動ブログの題材として取り上げるのは、チック・コリアの「Spain」です。
この世界中で演奏されている名曲をエモく弾き倒す為のフレーズ例を作成しました。
これは私が20年ぐらい前に弾いたアドリブの音源から2コーラスを採譜したものなので、当時を思い出しながら解説していきたいと思います。
是非、アドリブやギター・ソロ作りの参考にして下さい!

アプリ『PhraseStock』のご紹介

『PhraseStock』は プロギタリスト監修のフレーズ練習アプリ。楽譜はもちろん、プロによるお手本動画やリアルタイムで押弦ポジションが表示されたりと様々な機能でフレーズ習得をサポート!

本記事で紹介されている『Spain』のフレーズはオトノミチシルベ 福岡エリアのギター講師 目見田光 先生による考案!アプリ『PhraseStock』にも収録されていますので、アプリとブログの併用でよりフレーズへの理解が深まります!

「コード進行解析」

まずはリードシートを見ながらコードを弾いて、進行を確認していきましょう!

G△7とF#7で構成されている最初の4小節が「Spain」の特徴的な部分であって、5小節目以降は普通のダイアトニック的な進行になってる事が分かると思います。

1~4小節目

曲のKeyはBマイナーです。
最初2小節のG△7は♭Ⅵ△7でBナチュラル・マイナーのダイアトニック・コードになります。
次のF#7はⅤ7ですが、なんとドミナント・モーションしてません!
通常、ナチュラル・マイナーのダイアトニック・コードに含まれないⅤ7が導入される進行は、Ⅰm7へのドミナント・モーションかトニックの代理コードへの偽終止です。

では何故、2小節も使ってⅤ7が導入されているのでしょう?

ノン・ダイアトニック・コードの導入については、セコンダリー・ドミナントの様な次のコードへ向かう機能的進行のみ、音楽理論として説明されている事が多いです。
しかし次のコードへ向かう為だけではなく、曲の雰囲気やスケールの感じを演出する為にノン・ダイアトニック・コードを導入する非機能的進行というものがあります。

例えば3コードのBlues進行で使われるⅠ7やⅣ7なども、雰囲気やスケール感を出す為のコードですね。
Blues進行ではトニックをⅠ7にする事により、楽曲の土台となるスケールがミクソリディアンである事を感じさせています。
また、サブドミナントをⅣ△7ではなくⅣ7にする事はブルージーな雰囲気を演出する上で、とても重要なポイントです。
これはコード自体の響きではなくコードに含まれる音が主音(ド)から見て、どのようなものであるかで決まります。

Blues進行の場合は
Ⅰ7の♭7th → ミクソリディアンの特性音
Ⅳ7の♭7th → そのKeyのブルー・ノート(♭3rd)

です。

曲の雰囲気やスケール感を演出する為の非機能的進行は、他にも色々と考えられるので研究してみると面白いと思いますよ。
コード進行の例を2つ作ってみたので、興味のある方は( Lesson 1 )を参照して下さい。

Ex.1「ブルージーな雰囲気を出す為のコードを使った非機能的進行」
ブルー・ノートを使ったソロを弾く為のコード進行の例
Ex.2「ペンタトニック・スケールが高いテンション感で響く非機能的進行」
マイナー・ペンタでソロを弾くと勝手にオシャレに聴こえるコード進行の例

(Lesson 1)

前置きが長くなってしまいましたが「Spain」に話を戻しましょう。

3~4小節目のF#7は3rd(A#)の音が主音(B)から見ると△7thであり、Bハーモニック・マイナー・スケールの構成音になります。
よって、この2小節はハーモニック・マイナーのスケール感を出す為の非機能的進行だと考えるのが妥当です。

5~12小節目

では残りの5小節目以降を見ていきましょう。
基本的に、トニックであるD△7とBm7に向かってドミナント・モーションするだけの進行です。
最後のB7は、頭のG△7へ偽終止する為のセコンダリー・ドミナント・コード。
この8小節は『PhraseStock』連動ブログ第1回で取り上げた「枯葉」のAセクションと殆ど同じで、マイナーⅡ-Ⅴがダブル・ドミナントに変わっただけの進行です。

「ソロのアプローチ(1回し目1~4小節目)」

ここから4小節ずつTAB譜を載せて解説していきます。

「Spain」のコード進行を弾きこなすには、この4小節のフレージングが肝になります。
使うスケールは
G△7 → Bナチュラル・マイナー・スケール
F#7 → Bハーモニック・マイナー・スケール

が基本になり、この2つのスケールを対比させたフレーズ作りをする事が重要です。

なお、半拍3連と32分の様な非常に細かい音符で装飾したり、16分音符と3連符を組み合わせて使うなど、スパニッシュの雰囲気を出す為に譜割りの工夫もしているので参考にしてみて下さい。

1小節目 G△7

まず3rdから入り、すぐにターゲット・ノートである△7thに着地。
そして4拍目裏で上下のアプローチ・ノート(Rootと6th)を使い、次の小節のターゲット・ノートである△7thへ向かいます。
このアプローチ・ノートの1つであるRootの音は主音から見ると♭6thであり、Bナチュラル・マイナー(エオリアン)の特性音です。
私は♭Ⅵ△7に対してRootの音が好きではなく、普段はフレージングする時に避けてしまうのですが、今回は意図的に経過音として使用する事でナチュラル・マイナーのスケール感を演出してます。

2小節目 G△7

1拍目に△7th。
その後は3拍目の5thから次のターゲット・ノートであるF#7の3rdを目指して上昇する事だけを意識したフレーズです。
当然、ここにも経過音としてRootの音は使われてます。

3小節目 F#7

ここではBハーモニック・マイナーのスケール感を演出する事が重要です。
その為にはハーモニック・マイナーの特徴である♭6th(G)と△7th(A#)の両方の音を使用してフレージングしていく事になります。
この2音をF#7側から見ると♭9thと3rdです。

では、フレーズを見てみましょう。
3rdから入り#9thと♭9thを経過音にしてRootへ下降するフレーズです。
このように、特徴となる音を即座に使う事で1~2小節目とのスケール感の違いを明確に表現してます。
フレーズには#9thも入っていますが、意識しているスケールはハーモニック・マイナーです。
4拍目のスライドで弾いている♭13thは次の小節への経過音。

4小節目 F#7

5thに着地。
3拍目頭を16分休符で3rdから入り、上下のアプローチ・ノートを使って次のコードの9thへ。

「ソロのアプローチ(1回し目5~8小節目)」

5小節目 Em7

ターゲット・ノートである9thに着地。

6小節目 A7

ここはオルタード・スケールを選択しても良かったのですが、コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール(通称”コンディミ”)を使用してます。
表現しているハーモニーはA7(♭9. 13)で、意識しているのは13th , ♭9th , 3rdで出来るアッパーストラクチャー・トライアドのF#です。
この考え方について詳しく知りたい方は『PhraseStock』連動ブログ第1回の(EX.1)を参照してください。
フレーズでは2拍目の下降するラインでF#のトライアドを使っています。
そして4拍目に定型的なフレーズを弾いて次のコードの3rdへ解決。

7小節目 D△7

リズミックな4度フレーズを2拍ずつ弾いてます。

1~3拍目(3rdからRootに完全4度で到達)
3rd (F#) → 6th(B) → 9th(E) → 5th(A) → Root(D)

3~4拍目(△7thからRootに完全4度で到達)
△7th(C#) → 3rd (F#) → 6th(B) → 9th(E) → 5th(A) → Root(D)

そして次のコードの#11thへ。

4度フレーズを使うと無機質な雰囲気を演出する事が出来ます。
また、コード感が希薄になるので、厳しいテンションなどに向かう場合やスケール・アウトする時にも有効です。
今回は次のコードの#11thという厳しいテンションへ行くのに使用してます。

8小節目 G△7

1拍目で#11thに着地。
4拍目は次のコードのアウフタクト。

「ソロのアプローチ(1回し目9~12小節目)」

9小節目 C#7

C#7の3rdが主音から見ると♭5th(ブルー・ノート)になる事を利用してブルージーに弾いてます。
一見、ただのBマイナー・ペンタトニック・スケール+♭5を弾いているように見えますが、ブルーノートを絡めて半音下にある#9thにアプローチする事を意識したフレーズです。
C#7がドミナント系のフレーズを使わず、ブルージーに攻略できる理由の詳しい説明は( Lesson 2 )を参照。

(Lesson 2)

10小節目 F#7

アウフタクトで入り、ターゲット・ノートであるRootに1拍目で着地。
2拍目の最後の16分音符からF#ハーモニック・マイナー・パーフェクト5th・ビロウの定型フレーズで次のコードの9thを目指して下降。

11小節目 Bm7

この小節で意識している和音はアッパー・ストラクチャーの考え方を使った♭3rdからの△7コードです。
分散和音を直接弾かなくてもコード感を出せる、経過音を使ったフレーズ作りの参考にして下さい。

1拍目
上下のアプローチ・ノート(9thと△7th)を使ってRootへ着地、そして2拍目頭の♭3rdへ向かってスケールを上昇するm7コードで非常によく使われる定形フレーズ。
この様にターゲット・ノートを上下のアプローチ・ノートで挟むフレージングでは、

上 → スケールにある音
下 → 半音下の音

を使う事が多い。

2拍目
♭3rdから5thまでブルー・ノートを使ってスケール・ライクに上昇。

3拍目
しばらく16分音符で埋めるフレーズが続いたので、ここはリズミックなアプローチをしてフレーズに躍動感を与えてます。
音は♭7thから9thを経過して次のターゲットであるRootへ着地。

4拍目
シンコペーションでRoot。

12小節目 B7

2拍目最後の16分音符から入る。
3拍目から4拍目の頭に掛けては♭3rdのインターバルで下降する音形を使ったフレーズを弾いてます。
詳しくは( Lesson 3 )を参照。
これを1本の弦でスライドやプリングを使って演奏する事により、独特のウネウネ感を出してます。

(Lesson 3)

「ソロのアプローチ(2回し目1~4小節目)」

1~2小節目 G△7

2回し目に入ったのでソロを盛り上げる為、ポリリズムを使ったシークエンス・フレーズを弾いてます。
後半の小節で音数が増える事を念頭において、ここでは休符の入ったリズミックな6音モチーフを選択。
音の中身は5thから△7thまでをスケール・ライクに行き来してるだけです。

シークエンス・フレーズでは、だんだん譜割りを細かくしていってソロを盛り上げる手法が多いですが、今回は最後に3連符を使用する事でドッシリと聴かせる大人なフレージングにしています。
このように譜割りを大きくするのも、なかなか効果的ですよ。

3~4小節目 F#7

3小節目1拍目
ここも即座に3rdと♭9thを使用する事でBハーモニック・マイナーのスケール感を演出してます。

4小節目
オルタード・スケールを下降して5thに着地。
通常は次のコードの9thに解決する為に使用するフレーズを、今回は解決させずにF#7の小節内で弾いてます。 ( Lesson 4 )を参照。

(Lesson 4)

このように同じフレーズでも別のコードの上で使うと、いつもと違う色合いを与る事が可能です。

「ソロのアプローチ(2回し目5~8小節目)」

5小節目 Em7

Eドリアン・モード的なフレージングをしてます。
2拍ずつEm7 A7とⅡ-Vに分解してフレージングしたと考えても良いでしょう。
使用しているのはEメロディック・マイナー・スケールです。

1拍目
アウフタクトで弾いている音(G)を含めてG△7(#5)の分散和音になってます。
アッパーストラクチャーの考え方を使用しており、表現されているのはEm△9です。
m7コードに合わない△7thを入れる事で少し浮遊感のあるフレーズに仕上げています。

2拍目
次の小節の頭を目指したクロマチックのフレーズ。

3~4拍目
ドリアンの特性音である13thから入りRootへ着地。
11thからクロマチック・アプローチを使ってリズミックに下降し、次のコードの♭7thへ。

この2拍を分解したA7と考えると3rdから入り5thへ着地。
Rootからクロマチック・アプローチで♭7thへとなる。

6小節目 A7

シンコペーションで♭7thから入る。
さりげなく♭9thを経過音に使って次のコードの3rdへ。

7小節目 D△7

いよいよソロも佳境に入ってきたので速いパッセージも入れていきます。
2拍目と3拍目に弾いているのは3ノート・パー・ストリングスの6連フレーズです。
一見スケール・ライクな6音モチーフのようですが、ここでもアッパー・ストラクチャーの考え方を使ってます。( Lesson 5 )を参照。

(Lesson 5)

8小節目 G△7

5thから入り、すぐにオクターブ上の5thへ。
ここは速いフレーズの部分より高い音域のロングトーンを使って緊張感を出す。

「ソロのアプローチ(2回し目9~11小節目)」

9小節目 C#7

ソロのラスト・スパート!
ポリリズムを使ったシークエンス・フレーズで白熱した雰囲気を演出してます。
Ⅱ7なので当然フレーズはブルー・ノートを絡めたものです。
2回し目の1~2小節目と違い、今回は音の詰まった6音モチーフを弾いてます。

10小節目 F#7

ここはソロの締めくくりの部分です。
前の小節の流れからブルース・フレーズをリズミックに弾いてます。

11小節目 Bm7

シンコペーションでRootに着地。

「最後に」

これまで解説された事を意識しながらフレーズを弾いてみましょう。
意図のあるフレーズの作り方やコードとスケールの両方から見たハーモーニーの感覚が身に付くと思います。
お手本と一緒に練習したい人は、是非アプリ入れてみて下さいね。

PhraseStockには今回のようなジャズ・スタンダードのソロ以外にも色々なフレーズが掲載されています。
基礎的なテクニックの練習用フレーズはもちろん、Neo Soul,Rock,Blues,Funk,Jazz,Latin,Fusionなどオール・ジャンルのフレーズが満載です。
スケールやコード・トーンの表示機能もあり、テンポも自由に変えられるので指板上の音の理解や難しいフレーズの練習にも向いていると思います。

次回『PhraseStock』連動ブログ第3回ではサブドミナント・マイナー終止を使った曲の攻略について書く予定です。乞うご期待!

目見田 光

15才からギターを始め、96年九州芸術音楽学院ギター講師就任と同時にプロ活動を開始。

大森明、小畑和彦、川崎哲平、中村あゆみ、日野"JINO"賢二、村田隆行(あいうえお順 敬称略)など多数のトップ・ミュージシャンとのライブやレコーディング、CMやゲームの音楽制作と幅広く音楽活動を続けている。

またロックやジャズ、フュージョンなど様々なジャンルに精通したオールラウンドな演奏スタイルを持つ数少ないギタリストである。

現在では演奏以外にもアレンジ、プログラミング、など活動の場を広げ活躍中。

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