【レスポール×ストラト企画①】LesPaulに愛を (西山昌一郎 著)
こんにちは!オトノミチシルベギター講師の西山昌一郎です。
今回は機会を頂き、LesPaul(レス・ポール)型ギターについての出会いや想いを語っていきます。
レスポールギターとの出会い
自分が初めてレスポール(以下LP)型のギターを手にしたのは、高校生の時です。
親戚が持て余していた
Epiphone Les Paul Custom Ebony
を譲ってもらったことがきっかけです。
それまでYAMAHAのエントリーモデルで、
ピックアップSSH配列のエレキギター(現在のPACIFICA PAC100シリーズ的なモデル)を使っていました。
YAMAHAと比較してやたら重たいギターだなと思った記憶があります。
しかし、そのサウンドは高校生の自分でも明らかに分かるほどぶっとい!!
存在感のある音だなと感激したものです。
そうして高校時代はエピフォンLPをメインに使っていましたが、
大学入学を機に上京した際、祖母から入学祝いを頂きました。
ちょうど高校の時に習っていたギターの師匠がGibsonLPカスタムブラックビューティーを使っていたこともあり、自分も知識が乏しいながらも一生モノのLPが欲しいと思い立って、
祖母のお金と自分の生活費(笑)を足して何とか20万弱を捻出。東京の楽器屋を訪れます。
そこで出会ったのが、2002年当時はまだヴィンテージではなく「中古」扱いだった
1974年製 Gibson Les Paul Custom (Ebony Black)
価格も現在と比べれば手に入りやすかったと思いますが、なぜその中から1974年を選んだのかというと
RandyRhoadsのメインギターが1974白のLPカスタムだったんですよね。
音や構造の事(3Pマホネック期、パンケーキボディ、フレットレスワンダー、PAFピックアップ等)なんて全然知らずに、とにかくランディが白だから、自分は黒を買おう!って決めていました笑
このギターで大学時代はJAZZ&Fusionをやっていました笑
その後リフレットやら色々改造して今では自分にとって絶対に必要な一本となっています。
1974レスポールへの想い
それでは愛機1974LPカスタムブラックの紹介を・・
まず見た目の重厚感!
LPの黒って個人的にギターの中で最もカッコイイルックスじゃないかと思っています。
神秘的とも言える吸い込まれるような黒。縁の経年による黄色い焼け具合。ゴールドパーツのくすみ。
購入時からリアPUカバーが外されており、これも一層セクシーさに拍車を掛けます。
音も独特です。
よくLPは「太い音がする」と言われますがその通りで、
特に2~3弦の音が巻き弦(4~6弦)かと思うくらい太い音が出てきます。
かといって音が曇っているわけではありません。それはまるでピアノのようです。
リアフロントピックアップ共に立ち上がりが遅い事はなく、そういった点でストレスを感じたことはありません。
リアPU・TREBLEポジションは、古いギター特有の枯れたトーンで、
クリーンではギラつきがありますが、決して耳が痛い事はありません。
歪ませるとまず噛みつくようなハイが立ち上がり、パンパンに張ったローミッドのサスティーンに加えて、
全体がクリーミーというよりはワイルドで粒が荒っぽいザラザラとした感触を持っています。
このLPの本懐であるバッキング、ソロ、何をどう演奏しようとも主張が一貫したROCKなトーンです!
例えるなら「筋が通った不良の音・番長」。
PUミックス・センターポジションは、意外かもしれませんがクリーンカッティングが非常に優秀です。
ギラつきが抑えられつつ、重た過ぎない軽快なサウンドです。
やはりアタックに独特のバイト(噛みつき)感があり、バンドアンサンブルの中でも前に出てくる特性があります。
「勉強のできる不良」とでも言いましょうか。
フロントPU・RHYTHMポジションは、「甘い」というのが的確でしょう。
先ほどからのバイト感やザラつきは奥に下がり、ミッドとローの特性が強く出てきます。
こちらは主にソロで使用します。歪ませるとキメ細やかでクリーミーなサウンドです。
クリーンはまるでホロウボディではないかと思う程の太さです。
ゴリッとしてるというよりはボンッ!って弾けるような表現になります。
こちらは例えるなら「優しく強い漢」です。
たった3点のPU切り替えで3人の人格が現れる、一台のギターとは思えないくらい豊富なトーンを得る事が出来ます。
ただ決して弾きやすいギターではないです笑、
3人(3ポジション)とも存在感が強すぎて全然言う事聞いてくれないです・・。
一年くらい封印していた時期もありました。色々考えて辿り着いた結論が「手なずけるのは無理!!」でした笑
背伸びしたプレイをすると、すぐギターがついてこなくなります。
何せ自分より長生きしているギターなので、このLPを弾くときは先輩の胸をお借りする気持ちで弾いています。
逆に自然に弾くことが出来れば「こうしたら?」ってLPからプレイ(フレーズ案や運指)を導かれる事もよくあるのです。
・富山の師匠とレスポール
上記とは別に、このLPへは特別な思い入れがあります。
大半が祖母から頂いたお金で購入した事以外に、
少し触れましたが、地元富山でギターを教えてもらっていた奥山雄樹師匠が
Gibson Custom Shop Les Paul Custom (Black Beauty)
を使っていた事です。(ブラックビューティーはカスタムショップ製の俗称、自分の1974は型も色も同じだがカスタムショップ製ではない)
奥山師匠は日本のロックだけを聴いてきた自分に音楽の世界が無限に続いている事を教えてくれました。
「速弾きがしたいです」って言った時に「そんなのいいからペンタトニック(スケール)を覚えろ」って
言われて強制されたのは忘れません笑
高校生の自分にとっては第二の親父みたいな存在でした。
ある程度道を外れそうになった時や進路で迷った時、いつも師匠は自分のそんな話を聞いた後、
ブルースセッションしてくれました。やっぱりギターって素敵だよねって音で教えてくれました。
ひとしきりセッションが終わると、レッスンは早々に切り上げられ、
喫茶店に連れていかれコーヒー一杯でたくさん音楽や人生の話をしました。
レッスンはどうしたんだ?って感じですが笑 当時自分はそれで良かったんです。
高校生の我々にライブをやる場所を提供してくれたのも師匠でした。
子どもはライブハウスなんか借りられないので、いつも師匠が会場を借りてくれて、チケットは1枚500円でした。多分金額の事だけ言うと赤字だったんじゃないかなぁ・・。
「タバコと酒は持ち込むな、後は好きにやれ!」って、いつだって我々世代の音楽を盛り上げようとしてくれていました!
師匠は自分が大学2年の時、2003年に突然交通事故で他界されました。
奥山師匠が地元富山の音楽を盛り上げてくれたお陰で、
師匠一人でやっていた小さなスクールから、自分を含め3人も作曲家などプロを輩出しています!
もちろんプロアマは関係なく我々門下生は、師匠の想いを自分なりに受け継いでそれぞれに音楽を続けています。
あの時、安いトランジスタアンプ直&ブラックビューティーで極上極太、魂のサウンドを出していたのが忘れられません。今でもそのサウンドの記憶をこのLPを弾くうえで目標にしています。
自分の1974LPには師匠の教室[ARMS Guitar School]のステッカーが張ってあります。
いつか師匠のようなぶっとい音が出せるまで!と思わせてくれるのが、この1974LPカスタムなのです。
レスポールとアンプ直の美学
LPは個人的にアンプ直が一番”らしい”音が鳴ると思っています。
ギターの王者に対して過度なエフェクト装飾は、時に愚の骨頂である場合があります。
例えばスタジオによくある「Roland JC-120」
とりあえずLPを直で差してみて、
ディストーションはOFF、MID&BASSはお好みで、トレブルは0~1、
代わりにブライトスイッチ(BRI)を入れてみてください。
痛さが取れたまるでピアノのような太いクリーンが得られるでしょう。
アナログディレイなんかをスパイス程度に掛けてあげればJAZZやクラシックロックなんかのリードにもってこいです!!
Marshallの「JCM900」「JCM2000」「JVM」なんかのリードチャンネルは、本当にアンプ直でいいです。
どんなセッティングにしたって、LPの核が強く主張します。
個人的にはクランチ程度の歪みでトレブル上げ気味にして、ピックアップのバイト感(噛みつき感)が出る設定が好きです。
レスポールといえばこのギタリスト
B’z松本孝弘さんや奥田民生さんはギターをやっていない人でも知るLPユーザーですが、他にも名手がいっぱいいますよ!
ヨルシカ n-buna & 下鶴光康(ヨルシカ サポートギタリスト)
ヨルシカ OFFICIAL SITE Twitter Instagram
下鶴光康 Twitter Instagram
あまり情報がないのですが「思想犯」のリードギター等は恐らくLPであろうサウンドと、
実際ライブやYoutubeなどで使用を明言している事からピックアップしました。
同じLPでも年代や機種、個体差やその他機材セッティングも含めてこんなサウンドになったりします。
X PATA
Official Website Twitter Instagram
まず立ち姿がメチャクチャカッコイイ!!LPの場合弾きやすさは多少無視してでもストラップは腰が基本ですよね笑
サウンドもLPらしいザクザクとした中にも甘さがあるサウンドで、hideの攻撃的サウンドとの対比が本当に素晴らしい!
PATAさんは基本全てLPなので、紅など他の名曲でもそのサウンドが聞けるでしょう。
GLAY TAKURO
GLAY公式サイト
こちらはあまり知らない人が多いんじゃないでしょうか?
実はTAKUROさんもLPカスタムユーザーでHeavyな楽曲の時に使っているんです。LPらしい粉っぽい音がしていますよね!!
Randy Rhoads
Apple Music Spotify Youtube Music
Ozzy Osbourne – ソニーミュージック
洋楽派の貴方へ、皆まで言う必要はありませんね。
ロックの歴史上非常に重要なギタリスト、ランディローズ。
ランディを語りだすとここから1万字くらい増えてしまうのでまたの機会に・・笑。
個人的にLPと言えばランディ!!ライブアルバム「Tribute」は必聴です。
玄人の貴方へ、最近GibsonTVよりこんな動画が上がりました。たまらない・・!
最後に手前味噌ですが、西山が先に紹介した1974LPカスタムで全編録音したのが
6:30~のソロは、あまり深く考えず赴くままに弾いた、正にLPに導いてもらったフレーズです。
「ときめきアイドル」
公式サイト Twitter
他にもアニメ「けいおん!」の平沢唯ちゃんが作中で使用しているギターはGibson Les PaulStandardと言われています。お好きな方は是非「ギー太」にも注目して見てください。
ギターに愛を、自分の写す鏡である1974レスポール
随分と書いてしまいましたが、自分は今回紹介した1974LPブラックとは精神的繋がりが大きいです。
もう一本カスタムショップ製(黄色)も持っていますが、こっちは同じ形してるのに物凄く弾きやすいです笑
持っている全てのギターに愛着がありますが、
多少背伸びしてもついてきてくれるお利口さんも居るし、1974LPみたいに冷たくあしらわれる時も・・。
自分がこの1974LPが大好きな理由は、自分の今の力量を分からせてくれる事、
そして師匠のような魂のサウンドを出せるように、
もっとギターと仲良くなりたい、愛したいと思わせてくれる事です。
例えると写真の加工アプリが使えない、盛れないんです笑
自分を写す鏡のようなギターだからこそ、より深く愛せるのかもしれません。
ここまで読んで頂いた皆さんが、そうした「自分を素直に体現するような一本」に巡り合えること、
またはお持ちのギターを愛し、そうなっていく事を願っています。
特にレスポールとは、プレイや音楽的精神との対話がしやすいと思っています。
これからもレスポール含めギターに愛を注ぎ、もっと仲良くなっていきたいと思います。
西山 昌一郎
ギタリスト、アレンジャー。 リットーミュージック「ギター・マガジン」誌コンテスト「2016 Guitar Magazine Championship vol.9」 グランプリ受賞。 2012準グランプリ受賞。
日本大学文理学部卒業。同大学Jazz研、慶応大学クロスオーバー研究会所属。在学中より、プロとして活動を始める。
アニメジャパンフェスティバルAJF NeoGeneration2013ハウスバンド、織田哲郎、マキタスポーツ(Fly or Die)、Kinki Kids、柊木りお、アキシブProject、GALETTe、ANNA☆S、渡辺宙明、堀江淳、五條真由美、チャン・リーメイ、マスダシマイ、asfi、sonymusic劇団ハーベスト、執事歌劇団Tact、ツートン青木、青木隆治、Voice、ユージソン、やないけいこ、金色のコルダ、アンジェリーク、三國無双、戦国無双シリーズ、楽器フェア2016JVC KENWOOD社デモンストレーター等々、レコーディング、アレンジ、コンサート、TV撮影等に参加。
ギター、ウクレレ講師としても、一般生徒の他に、ギタートレーナーとしてGAKU-MC(EASTEND+YURI)、MIKI(SoundHorizon)等を担当。
1983年、福井県生まれ、富山県育ち。奥山雄樹、松原正樹、鈴木健治に師事を受ける。