どこよりも詳しいMIYAVIサウンド解体新書 〜1人で3台のアンプとサイボーグギター!?〜
『MIYAVI奏法』連載講座!
初めまして。MIYAVIさんに人生変えられたSHIMAGAKUです。
この度、オトノミチシルベの動画でMIYAVIさんのギタースラップ奏法について解説させていただくことになりました。
動画の冒頭で演奏したものはMIYAVIさんの代表曲 “What’s My Name”のイントロ~ソロ~アウトロ部分です。
MIYAVIさんのギタースラップは誰もが憧れるプレイだと思います。僕もその一人で、時間を忘れて必死にMIYAVIさんのコピーに勤しむ日々を送っていました。
今回はまず、MIYAVIさんの様なギタースラップをするために必要な機材やグッズについてお話ししていきます!
「MIYAVIさんのように弾いてみたい!」という方はもちろん、音作りに悩んでいる方や「他人とは違うプレイをしてみたい!」という方にも、その”ミチシルベ”となるでしょう。
(動画の内容に一部追記などがございます)
唯一無二のスタイルを持つギタリスト MIYAVI氏とは?
MIYAVIさんはピックを使わず、弦を叩く『スラップ奏法』で知られるギタリストです。
スラップ奏法はベースではポピュラーな奏法ですが、MIYAVIさんのスラップ奏法の源流は日本の『三味線』にあるといいます。
その独特かつ鋭いギターサウンドや唯一無二のスタイルから世界を魅了する『サムライ・ギタリスト』と呼ばれ、2022年時点で8度のワールドツアーを成功させています。
また俳優・モデルとして多くの映画やファッションショーにも出演するなど多彩な才能を持つほか、2022年にはMIYAVIサウンドでアニソンをカヴァーしたアルバム”MIYAVIVERSE -Anima-“をリリースするほか、YOSHIKI氏をはじめHYDE氏・SUGIZO氏というロックの頂点ともいえるスターと共にバンド”THE LAST ROCKSTARS”を結成するなど多方面で活躍しています。
ピックの代わりに爪で弾く!?
スラップをするだけならベース同様爪を伸ばす必要はありません。
ですがMIYAVIさんはスラップのみならず、ピッキングやストロークでもピックを使いません。
ベースの様に指の腹で弾いているわけでもありません。
実は、MIYAVIさんは爪をピック代わりにすることで、ピックを使わずともアタック感のあるピッキング/ストロークをされている様です。
MIYAVIさんの様な迫力あるピッキング/ストロークをするには、人差し指・中指・薬指の爪を指先から3~4mm程度長くする必要があります。
ギター演奏向けのネイル
ギターで爪を使ったピッキング/ストロークをする際は鉄弦を激しく掻き鳴らすので、伸ばしただけの爪ではすぐに削れたり割れてしまったりします。
そういった磨耗から爪を守るためには、ギター演奏に適したネイルをすることをオススメします。
本記事内の動画では”Kaina/ザ・ギタリスト”というネイルを使用しています。
このネイルは元々クラシックギターやフラメンコギターの演奏向けなので、フォークギターやエレキギターなどの金属弦ではネイルの摩耗が早くなってしまいますが、光沢が無く色が自爪に非常に近い上に塗るだけという簡単さ。学校や職場などネイルが難しい環境でもしやすいのがメリットだと思います。楽器店で売っていることが多いので、新しい弦を買うついでに探してみてくださいね。
グラスネイルという非常に硬くて分厚く、耐久性も上で紹介したものより強いネイルもあります。SHIMAGAKUは途中からこのグラスネイルに乗り換えていますが、扱いがとても大変です…!書き出すと長いので割愛しますが、とにかく手間と時間、そしてコツが要ります。
おまけに値段もかなり張るモノなのでハードルが高いことは間違い無いのですが、爪自体の摩耗を大きく抑えられる上に素爪や普通のネイルでのピッキングでは絶対に得られないクリアでハッキリとした音を出せる様になるので、本気でMIYAVIさんのギタープレイをコピーしたい方には是非試して欲しい「機材」です。
MIYAVIさんはストラップの長さにもこだわっている!
MIYAVIさんはストラップの長さにもこだわっています。
それは「立って弾いても座って弾いても、ギターの位置が変わらない長さ」であること。
姿勢が前屈みにならず崩れにくいことから、座った状態でもストラップがギターを支えられる長さにしています。
ジャズギタリストやテクニカル系のギタリスト、さらにはビートルズまで、ギターの位置が高いことがありますが、あの高さにはしっかりとした理由があるのです。
MIYAVIさんに更に近づくための音作り
MIYAVIさんの様な鋭くアタッキーなギターサウンドを得るには、音作りも重要です。
ここでは本人が使用しているアンプやエフェクター、さらにはその接続方法まで解説していきます!
Marshallの中でもこだわろう!
MIYAVIさんは2015年にTaylor T5からテレキャスターに変えてから、スラップ時の音色をクランチセッティングのMarshallで作っています。
しかし同じMarshallでも機種によって音色が大きく異なります。
MIYAVIさん本人も時期によって異なるMarshallを使用しており、2016年のFire Birdツアーなどでは1959(俗にいうPlexi)、以降はJCM2000(DSL)を主に使用しており、海外ツアーで稀にJCM800を使用する場面も見られます。
これらのギターアンプに共通するSHIMAGAKU個人の印象は、低域のレスポンスが速くブライトであることです。唯一JCM900ではどうしても低域がブーミーでもたつきやすく、MIYAVIさんの様なスラップのスピード感を表現しきれない様に感じています。
おすすめはGAINを上げすぎず、MASTER VOLを上げ目にしてパワー管でも歪みを作るセッティング。音が減衰していくと同時に歪みも弱くなっていくのがちょうど良い加減だと思います。それによって低域のスピード感を保ったまま歪ませられます。
ギターにベースアンプ…?
Taylor期から続いているMIYAVIさんの迫力あるギターサウンドのもう一つの要。それは、ピッチシフターでオクターブ下げた音をエフェクターボードからベースアンプにパラアウトしてしていることです。
MIYAVIさんは現在ピッチシフターにEH/POG2を使用していますが、レイテンシが非常に少ない上に倍音を保ったまま和音でも自然なピッチシフトができるのが特徴です。
一部のオクターバーでは内部で生成した単純な波形が出る仕様が存在するので、それらとは違うところがミソです。
例)ギターアンプとベースアンプの組み合わせ
一方はギターアンプに、もう一方はピッチシフターでオクターブ下げた音をベースアンプに送っている
脳天を突き破るFUZZサウンドの秘密
2015年のMIYAVIさんのアルバム”THE OTHERS”からFUZZとWhammyを用いたソロ音色を聴くことができる様になります。
実はMIYAVIさんがFUZZを使用する時はMarshallではなく、Fenderのアンプから音が出る様になっています。
他の動画で触れていますが、2016年(Fire Birdツアーなど)まではZ.VEX/Fuzz Factoryのハンドペイント版とFender/Super-Sonic Twin Comboの組み合わせ、2017年にFuzz FactoryからPete Cornish/DELUXE SERIES NG-3に変更したのちにアンプも65年式の黒いTwin Reverbに変わっています。
さらにアンプから音を出すことに加え、DI(ダイレクトボックス)を介してFUZZを通した音をそのままミキサーなどへ出す様に分岐することもあります。(FUZZからアンプを通した音と、FUZZからダイレクトにミキサーへ送られた音がブレンドされたものが聴こえているワケです…!)これが最近のデジタルサウンドの中でも圧倒的な存在感を放つMIYAVIサウンドに一役買っています。
例)FUZZ使用時のシグナルルーティング。本人はFUZZ→Whammyだが、同効果でメーカー違いのエフェクターを使う場合などシステムによっては逆の接続順にした方が音質が良い場合もある。
こんな貴重な場面も!?大御所ギタリストとの共演ステージでまさかの…
MIYAVIさんが布袋寅泰さんのステージで共演したことで有名な2013年の”EMI ROCK SENDAI”
当時のMIYAVIさんはFenderアンプをメインに使用していましたが、トラブルにより使用不能になっていたそうです。
そこで代役として使用されたのがRoland/JC-120。
当時のTaylor T5のアコースティック/エレクトリックのハイブリッドサウンドと相まってJCからとは思えないユニークかつ貴重なギターサウンドが聴ける場面でもありました。T5ユーザーの方は一度試してみては…!?
もはやストラト!?テレキャスターを超えたMIYAVIさんのオリジナルギター
MIYAVIさんが2016年から使用し続けている現在のギターはFender Custom Shop製 オリジナル仕様のテレキャスターです。
テレキャスターといえば2ピックアップとハードテイルブリッジというシンプルな仕様ですが、MIYAVIさんのテレキャスターはセンターピックアップ・トレモロユニット・サスティナーまで搭載された、MIYAVIさん本人もインタビューで「邪道」という言葉が出るほどの異端なギター。
特にセンターピックアップにトレモロと聞くと「もはやストラトなのでは?」と思うかもしれませんが、MIYAVIさんにとっては「必要だった」カスタムだったのです。
さらに、2018年にはリアピックアップをオリジナルのテレキャス用からSeymour Duncan/Little ‘59に換装。テレキャスの要素はもうシェイプだけなのではと思ってしまうほどの改造ぶりですが、これはサスティナーの効きを改善するためのものと推測します。
スラップ時はぜひセンターピックアップで
そんなオリジナリティ満載のMIYAVIさんのギターですが、同様の音色を出すためにはやはりセンターピックアップの使用が不可欠です。
マニアックな領域になると、2017年のアルバム”SAMURAI SESSIONS VOL.2”まではスラップ時のピックアップはセンターとリアのハーフトーン、2018年のアルバム”SAMURAI SESSIONS VOL.3”以降のスラップではセンターのみを使用しています。(理由としてはおそらくリアピックアップを換装したことによるものと推測します)
同じセンターピックアップを搭載したギターでもテレキャスターとストラトではどう違うのか?気になる方もいらっしゃると思います。以前に友人からストラトを借り受けた時にギター以外は全く同じセッティングでスラップ演奏を弾き比べた音源がありますので、是非聴き比べてみてください。(公開用に録ったものではないためプレイやセッティングが雑ですがご容赦くださいませ)
テレキャスターの場合
ストラトキャスターの場合
ちなみにMIYAVIさんはFUZZ使用時はサスティナーもオンにしています。サスティナーは専用のデバイスが弦を強制的に振動させることにより通常では不可能な無限のロングサスティーンを実現できます。サスティナーの仕様上、ON時はリアピックアップが強制的に選択される様になっていますので、サスティナー非搭載のギターをお持ちの場合は音色によってピックアップも使い分けることでよりMIYAVIさん本人に近づいたサウンドを実現できると思います。
音作りまとめ
・スラップ時はセンターピックアップでMarshallアンプ+ベースアンプにオクターブ下げた音
・FUZZ使用時はリアピックアップ(サスティナー)でFenderアンプとDI直出し
(これだけ見るとサスティナーとトレモロユニットを搭載したSSHのギターを使用するのが近道かも…!?)
SHIMAGAKUのテレキャスターについているトレモロユニットは??
SHIMAGAKUのテレキャスターもいくつか改造を施してありますが、その一つであるトレモロユニットには”STETSBAR”と呼ばれる基本的に新たなネジ穴やザグリを空けることなく装着できるユニットを使用しています。
レスポールタイプやジャガー/ジャズマスタイプなどにも対応できる様、さまざまなモデルがありますので「トレモロユニットないけど穴開けたくないな…」という方には良い選択肢になると思います。
パーツに重量があることと、一部モデルには付属のネックシムを挟む必要があることがあるのでご注意ください。
SHIMAGAKUのテレキャスターは元々ピックアップ配列がSSH(シングルx2,ハムバッカーx1)仕様で専用の3点留めハードテイルブリッジが搭載されていましたが、特殊な仕様だった故に位置が合わず、新たにネジ穴を開ける必要がありました…。
MIYAVIさんのトレモロユニットはSuper-Vee/Maverickというテレキャスター専用のものです。キャビティを開ける必要がありますが、テレキャスター特有の大きなブリッジプレートの見た目とピックアップを保つことができることが特徴です。
おわりに
ここまでMIYAVIさんの様なギタースラップやピッキング/ストロークをするために必要な爪やアンプなどの音づくり、ギターなどの環境についてお話しさせていただきました!
スラップのやり方やMIYAVIさんの楽曲で使われているスラップフレーズの解説などは他の動画で詳しく解説しています。是非ご覧ください!
『MIYAVI奏法徹底解説!SHIMAGAKUチャンネル』はコチラ
SHIMAGAKU
2001年 東京都八王子市生まれ。
「MIYAVI奏法講座」として独学で学んだスラップギターの奏法やフレーズなどを解説する動画シリーズを制作。
ギターのみならずドラムやベース、最近では5年ぶりにサックスを再開するなどのマルチプレイヤー。
『MIYAVI奏法徹底解説!SHIMAGAKUチャンネル』はコチラ