Randy Rhoadsが愛される理由〜楽曲&奏法解説編〜
こんにちは!オトノミチシルベギター講師の西山昌一郎です。
前回はランディ・ローズの経歴や使用機材、アルバムのご紹介をしてきました。
今回は前回の最後に紹介したアルバムを深掘りしていきます。
4「音楽的に見たスーパーギタリスト ランディ・ローズ」
今回はこのライブアルバム『Tribute』を中心に、ランディ・ローズのギタリストとしての素晴らしさ、今では常識となっているギタープレイの先駆者的アプローチを掻い摘んでみたいと思います。
もちろんOzzyOsboune時代に残した
「BLIZZARD OF OZZ(ブリザード・オブ・オズ〜血塗られた英雄伝説)」
「DIARY OF A MADMAN(ダイアリー・オブ・ア・マッドマン)」
という偉大な2枚のスタジオ作品が元にあり、それをライブ環境においてどういうプレイで処理していくのか、という事が『Tribute』のギター奏法における大きな魅力となっています。
・Intro(カルミナ・ブラーナ おお、運命の女神よ)~「I Don’t Know」への高揚した流れとプロの仕事
カルミナ・ブラーナはオルフ作曲の声楽作品。出囃子でこの曲のチョイスは素晴らしい!期待と不安が入り混じる何とも高揚した気分になる。
そしてドラマー、トミー・アルドリッジのカウントから、ランディのギターが「I Don’t Know」のリフを奏でるのだが、注目は最初の1〜4小節である。
物凄いリズム走ってる!!そしてその高揚感がめちゃくちゃカッコイイ!!
何故カッコイイのかというと、4小節目でドラム&ベースが4分音符のフレーズで入ってくるのだけど、ここで自然と最初カウントしたテンポにぴったり戻るのである。
初っ端からもう止まらない!と思わせておいて、ちゃんと高揚感はそのままに収束させている。プロの仕事だ。
当時イヤモニはおろか、通常のウェッジ(フットモニター)ですら発展途上だった時代、アリーナ規模のアクトでこの精度。これこそライブの醍醐味であり、ランディ含めメンバー全員が一体感を持ったバンドにまで練り上げられていた証拠だと思う。
自分は当時この部分で、リズムがいい意味でヨレる事の素晴らしさやバンドの精度を突き詰める事を学びました。あとギタリストって、時にはこうでいいんだって事も!!
・「Crazy Train」はAメロがパイオニア的アプローチ
銘ギターリフとして疑いようのない本曲。皆さんはイントロのリフが印象に残っていると思いますが、自分はAメロのコードリフの素晴らしさについて語ろうと思います。
ここのコード進行は通常の解釈ですと、AメジャーのサブドミナントⅣ「D」、ドミナントⅤ「E」を突っ込んでくるアプローチ。既にとっても面白いです。
また楽曲キーをAメジャーとする場合、ルートはAのまま、ダイアトニック上の2.3度目のコードBm7、C#m7と解釈して通過するのですが
プログレ・Jazz方面のジャンルは一旦置いておき、自分の聞く限りでは、「Crazy Train」がリリースされた1980年時点でのロック史において1.3.5度を使った和音フレーズ等はよく聞かれますが、「〇m7(マイナーセブン)の7度」が強調されるような音列で弾かれていて、ここまでハードに歪んだコードリフは無かったと思います。
また、注意深く聴くとランダムではありますが一弦までしっかり鳴っている箇所が散見されますので、1弦も採譜しています。
そうなると1.3弦の二か所でオクターブ違いの7度が出ていると解釈でき、これは7thの強調と言っていいでしょう。
現代では当たり前となっている事ですが、恐らく「Crazy Train」が「〇m7」的な凝った響きのコードリフを世に広めた最初の曲ではないかと思っています。
・「Mr. Crowley」クラシック(バレー)フォームでしか出来ないEndingソロ
こちらも名曲ですね。とても有名ですが改めて解析すると、本曲のEndingソロ冒頭では、コードトーンの3音を1~2弦に割り振った速弾きが展開されています。
こちら音列的にはリッチー・ブラックモアが「Burn」ソロで演奏しているのと同じ考え方で構成されています。しかし大きな違いとして、リッチーは1~3弦に音を割り振っているのに対して、ランディは1~2弦で弾いています。
弦が少なくなることで左手をストレッチしたフレーズとなり、クラシックギターで使われるバレーフォームでしか弾けないストレッチ運指になります。
その代わり、プリングを駆使したレガートプレイになる事で物凄いスピードで演奏可能です。これはクラシックギターの教育を受けてきたランディ特有と言っていいプレイの一つです。
因みにヴァン・ヘイレンならきっとライトハンドでやっていたでしょうね笑
それにしても中間のソロ含め、何と美しい旋律なのでしょう!ギターソロだけで涙が出てきます。
・「Iron Man」における低5度パワーコード、Djent系の元祖か?
BlackSabbathの楽曲ですが、当時契約の問題だったかで絶対にセットリストにサバスの楽曲を組み込まなければならず、そういった理由で演奏されています。
ド頭のギターリフは、元祖となるBlackSabbathのギタリスト、トミー・アイオミVerだと4.5弦のみ、度数にすると1.5thパワーコードになりますが、ランディは更に6弦に5thのオクターブ下を付加しているように聞こえます。
これはランディのオリジナルアイデアになると思います。
たったこれだけの違いですが、恐ろしくヘヴィに聞こえてくると思います。
今でこそ知られているプレイですし、7弦など多弦ギターも存在する現在において当たり前となっているプレイですが、これも当時革新的アイデアだったと思います。
レギュラーチューンの6弦でどれだけヘヴィに弾けるのか?それを突き詰めた、今でいうDjent系の走りにも繋がるプレイです。
こちらもとんでもない高揚感、まるで自分が「最強の鉄人」になったような気持ちにさせてくれるプレイです。
・「Paranoid」解析不可能、狂気のギターソロ
こちらもBlackSabbath楽曲。問題はギターソロに突入してからの7~8小節目です。
1~4小節目ブワーっとEmのオスティナート(一定の音型を何度も反復する技法)フレーズで盛り上がってきて、5~6小節目はEメジャーとEマイナーのクロスフレーズ。
そして7~8小節目でコードはEmからDへ変化。
ここでランディがどんな解釈で弾いているのかは未だに多くの人に謎とされ、時に論争になっています笑。
一般的に言われているのは「7~8小節目は意図せず半音(1フレット)高くなってしまって全てを間違えてD#キーで弾いてしまった」ですが、実際音源を聞いてみてください。スケールアウトしたにしては全く違和感を感じないのです。
むしろここはアルバム全体のギタープレイのハイライトと言えるくらい物凄い高揚感に包まれます。
この狂気じみたソロ、自分は意図的にやっていると思ってる派です笑。もし生で聞いてたら、堪らずにメロイックサインを作って叫んでいただろうなぁ。
・「Dee」で魅せたクラシックギタリストとしてのランディ・ローズ
スタジオテイク、ランディのクラシックギターソロ曲。彼の優しい肉声も入っています。
「ハードロックが好きなギターキッズ達が初めてちゃんと触れたクラシック的な楽曲」と言っても良いのではないでしょうか?
自分もその一人です。クラシックやJazzに音楽的見分を広げていく際に「Dee」のお陰でアレルギーなく移行できたと思っています。
これを聞くと、特にランディのクラシックギタリスト・作曲家としての素晴らしさが分かります。
特筆すべきはそのメロディの美しさと、そしてこれまでランディのエレキギターをコピーしてきたキッズ達にとって、恐らくはあまり技術的には難しくないのです。
しかしピックを使わずフィンガーで高音と低音が対位法的に動くというクラシック的な奏法等は、自分や多くのロックキッズ達にとって、新しい表現の発見だったことでしょう。
・番外編「Diary of a Madman」美しく狂気的雰囲気の音楽的表現
Ozzyセカンドアルバムのタイトルにもなった楽曲。精神疾患、多重人格がテーマになっているストーリー。
イントロはアコギ&クラシック&エレキのダブリングで精密なコードアルペジオが弾かれていますが、展開される毎に段々と狂気じみていく雰囲気を感じます。
最初に登場するコードが半音下げで「A#11」。綺麗な響きです。
そこから「A7#11」「Adim」「Bm7-5/A」「A9」「Am9」「Am9/G」「F△7、13」「E9」「E7」
へとドロドロに展開してゆきます。
本曲、自分がランディのギター表現として一番好きな曲で、イメージで語ると「心が何かのきっかけでどんどん崩れていき、マッドマン(狂人)になってしまう」
そんな表現を冒頭10小節間で見事に表現していると思います。
ギターソロ直前のリフも絶望的雰囲気だし、中間ソロも「Aハーモニックマイナー+Aディミニッシュ」という2つのスケールが同時刻混在する部分があり、物凄く陰鬱な雰囲気で展開されていると思います。
「マッドマン」をこういった音楽的表現にして楽曲に落とし込む、というのはやはりランディは非凡な才能に溢れ、且つ時間をかけてギターを探求していたのだろうと容易に推察できます。
Ozzy Osbourne – Diary of a Madman (Official Audio)
5「今でもランディが愛されている理由」
本当は『Tribute』全曲、それ以外にもたくさんランディ・ローズの音楽的素晴らしさや先駆者的要素を語りたいのですが、止まらなくなってしまうのでこのあたりで笑
自分が生まれたのが1983年、その一年前の1982年にランディは逝去しています。
一緒な時代を生きていなかった自分ですら、ここまでのめり込む程の魅力を持ったギタリストがランディ・ローズなのです。
音楽的にも人間的にも素晴らしい魅力を持った方だったからこそ、今でも色褪せることなく世界中で愛されているのだと思います。
まだまだ語りたい事がたくさんありますが、自分がこれまで研究してきたランディ・ローズの魅力や素晴らしさについて、この記事で少しでも知るきっかけになって頂ければ嬉しいです。
自分もいつか、カリフォルニア州サンバーナーディーノにあるランディのお墓に御参りにいきたいな。
西山 昌一郎
オトノミチシルベ ギター科講師。
ギタリスト、アレンジャー。
リットーミュージック「ギター・マガジン」誌コンテスト「2016 Guitar Magazine Championship vol.9」 グランプリ受賞。2012準グランプリ受賞。
テレビやライブでの演奏系経も豊富です。 お子様から学生、社会人の方まで、生徒の皆さんから信頼の厚い講師です♪
アニメジャパンフェスティバルAJF NeoGeneration2013ハウスバンド、織田哲郎、マキタスポーツ(Fly or Die)、Kinki Kids、柊木りお、アキシブProject、GALETTe、ANNA☆S、渡辺宙明、堀江淳、五條真由美、チャン・リーメイ、マスダシマイ、asfi、sonymusic劇団ハーベスト、執事歌劇団Tact、ツートン青木、青木隆治、Voice、ユージソン、やないけいこ、金色のコルダ、アンジェリーク、三國無双、戦国無双シリーズ、楽器フェア2016JVC KENWOOD社デモンストレーター等々、レコーディング、アレンジ、コンサート、TV撮影等に参加。